高天原を追放されたスサノオノミコトが歩いていると、とてもいい匂いが漂ってきました。匂いをたどっていくと、そこにはオオゲツヒメノミコトの家がありました。オオゲツヒメノミコトは食べ物の神様。自分の鼻、口、お尻から食べ物を作り出す神様です。
オオゲツヒメノミコトはスサノオノミコトを歓迎して、食事を御馳走することにしました。そこでスサノオノミコトが見たのは、口や鼻、お尻から食べ物を吐きだ出す姿。汚いものを食べさせられる!そう勘違いしたスサノオノミコトは、オオゲツヒメノミコトを殺してしまいました。
すると、殺されたオオゲツヒメノミコトの頭からは蚕が、目からは稲、耳からは粟、鼻からは小豆、陰部からは麦、尻からは大豆が生りました。これらはカムムスヒノカミが拾い上げさせ、種として地上に授けました。
スサノオノミコトが出雲の川のほとりを歩いていると、川の上流から箸が流れてきました。川上を目指して歩いていくと、老夫婦と娘が泣いています。
「お前たちは誰だ?どうして泣いているのだ?」「私はオオヤマツミノカミの子でアシナヅチ、妻はテナヅチ、娘はクシナダヒメと申します。私には娘が8人いたのですが、毎年ヤマタノオロチがやってきて1人ずつ食べてしまい、今ではクシナダヒメだけになってしまいました。今年もヤマタノオロチがやってきます。クシナダヒメも食べられてしまうのかと思うと悲しくて泣いているのです。」
「私はスサノオノミコト。アマテラスオオミカミの弟だ!私がヤマタノオロチを退治しよう。もし退治出来た時には、娘を私にくれないか?」「恐れ多いことです。娘を差し上げましょう。」
スサノオノミコトは、クシナダヒメを櫛に変えて、自分の頭に差しました。そして、垣根を巡らし、8つの穴を開けて、そこに強い酒を入れた8つの酒船を置いておくと、やがて、大きな音を立てながらヤマタノオロチがやってきました。
8つの頭を持つヤマタノオロチは、8つの酒船に頭を突っ込んで酒をガブガブ。飲み干して酔っぱらったヤマタノオロチは寝てしまいました。その時です。「今だ!」という声と共に、スサノオノミコトがヤマタノオロチに切りかかり殺してしまいました。
スサノオノミコトが切りかかった時、カチン!と音がして十拳の剣の刃が欠けました。切り裂いて見てみると、そこには神々しく光る剣が出てきました。草薙剣(くさなぎのつるぎ)です。スサノオノミコトは、草薙剣を高天原のアマテラスオオミカミに献上しました。
戻ってきたスサノオノミコトは、クシナダヒメと暮らす神殿を建てる場所を探しました。須賀に着いたところで「ここに来て私の心はすがすがしい。」そう言って、その地に神殿を建てて暮らし始めました。その時雲が立ち、歌を詠みました。
八雲たつ 出雲八重垣妻籠みに 八重垣作る その八重垣を
スサノオノミコトとクシナダヒメの子が、ヤシマジヌミノカミ。
スサノオノミコトがオオヤマツミノカミの子カムオオイチヒメと結婚して生まれた子が、オオトシノカミとウカノミタマノカミ。
ヤシマジヌミノカミとオオヤマツミノカミの子コノハナチルヒメと結婚して生まれたのがフハノモジクヌスヌノカミ。
フハノモジクヌスヌノカミがオカミノカミの娘ヒカワヒメと結婚して生まれたのがフカフチノミズヤレハナノカミ。
フカフチノミズヤレハナノカミがアメノツドヘチネノカミと結婚して生まれたのがオミズヌノカミ。
オミズヌノカミが、フノズノノカミの娘フテミミノカミと結婚して生まれたのがアメノフユキヌノカミ。
アメノフユキヌノカミがサシクニワカヒメと結婚して生まれたのがオオナムジノカミ(スサノオノミコトの6代目の子孫)。後のオオクニヌシノカミです。