古事記

オオナムジノカミにはとても多くの兄神がいました。兄神たちは、稲羽に住むヤガミヒメと結婚したいと思っていました。ある日、兄神たちは、ヤガミヒメに結婚を申し込みに行くことになりました。オオナムジノカミは荷物持ちです。

兄神たちが気多の岬に差し掛かると、毛をむしられて真っ赤になった兎に出会いました。「海水を浴びて風に当たっているとすぐに良くなるよ。」と言うと、さっさと行ってしまいます。

「痛いよ~痛いよ~。」そこへ、大荷物を背負ったオオナムジノカミがやってきました。「どうしたの?真っ赤だよ。」「さっき通った神様に言われた通りにしていたら、ひどくなってしまって・・・痛くて・・・。」「今すぐ川へ行って、真水で体を洗いなさい。そして、ガマの穂を散らして、そのうえで寝転がってごらん。きっと良くなるよ。」

オオナムジノカミがヤガミヒメの元へ着いた頃、兄神たちはすでに結婚の申し込みをしていました。「私は、オオナムジノカミと結婚します。」驚いたのは兄神たち。「なんだと!」怒った兄神たちは、オオナムジノカミを殺す計画をたてます。

「おい!オオナムジ!この山には赤いイノシシがいる。上からイノシシを追うから、お前は下で待っていて捕らえよ!わかったな!」兄神たちは、大きな岩を火で焼いて、山の上から転がしました。何も知らずにそれを受け止めたオオナムジノカミは、火に焼かれた岩の下敷きになって死んでしまいました。

オオナムジノカミの母、サシクニワカヒメはとても悲しんで、天に昇り、カムムスヒノミコトにオオナムジノカミを生き返らせてもらいました。兄神たちは、生き返ったオオナムジノカミを再び殺そうと計画をたてます。そして、大木の割れ目にオオナムジノカミをはさんで殺してしまいました。

母のサシクニワカヒメはとても悲しみ、今度は自力でオオナムジノカミを生き返らせました。そして「逃げなさい!また殺される前に逃げなさい!木の国のオオヤビコノカミの所へ逃げなさい!」

オオヤビコの元へ逃げたオオナムジノカミを兄神たちが追ってきます。オオヤビコノカミは、木の俣からこっそりとオオナムジノカミを逃がしました。「ここを行けば、スサノオノミコトが住んでいる根之堅州国(ねのかたすくに)へ行けます。」